2013 | 9_21 | Saturday
伊庭靖子個展 at MA2Gallery
いつもお世話になっております、MA2Galleryさんにて、以前より気になっておりました伊庭靖子さんの個展が行われているとのことで伺って参りました。伊庭さんは磁器、そしてクッションを写真のように描くシリーズを手がけておりまして、これがまた、たいへん人気の作家さんでありますが、今回の作品たちは今までとは少し違った趣のものです。磁器の作品は、ロールストランドのマリアンヌ・ウエストマンのカップが被写体ですが、今までのように精緻で写実的というよりも、やや歪んだ空間が広がっているような感覚がいたします。今回の作品に限らず以前の写実的な作品も含めて、被写体はすべて一度写真に撮り、それを見て描いているとのことでして、伊庭さんの中のフィルターを何度も通り、それがパズルのように再構成をされているという過程にも驚きですが、どうやら、器やクッションをただ描くのではなく、その表面の釉や毛先の光の反射を描いていると、実像が出来上がるのだとか。写実的な描き方ではその光の見え方をすべて捉えることができ、一つの完成を得たため、今回はネクストレベルとして、今まで見えていなかった光を描いていくという、書いている私もよくわからない難しい境地に至っております。実物を拝見いたしますと、まるで抽象画のようでありますが、撮影をさせてもらったり、遠くから何気に見ると、不思議と実物のような見え方もしてまいります。角度や自然光によって作品の表情が一変するので、まるで実物と対峙する時の感覚でしょうか。いやはや光を描くとは何とも不思議なものです。百聞は一見にしかず、10月20日の日曜日まで開催をされておりますので、お近くにお越しの際は、ぜひ足を運んでみてください。
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2013 | 9_19 | Thursday
古染付盃 Huruimono06
少しずつ集まってまいりました、気軽で楽しい骨董品をご紹介するHuruimonoのコーナーです。今回は古染付の盃をご紹介です。古染付は明末〜清初あたりに中国景徳鎮で焼かれた染付けの名称で、荘厳極まれりの官窯ではなく、無数の民窯にて制作されたというのがポイントでしょうか。数焼かれたためか、材料が粗悪なものだったのか、釉と胎土の相性が焼成時にうまく合わず、口縁がポロポロと欠けているのですが、当時の日本の茶人たちはそれが何とも侘びがあると、”虫食い”と称して愛玩したというのが古染付です。しかし今の中国には古染付の器は残っておらず、すべてが日本にしか存在しないというから不思議なものです。あまりにも雑器で捨ててしまったのか、日本の茶人の注文品のみ制作していたのか、いろいろと昔から言われているようですが、未だ定かではなく、最近ようやく景徳鎮にて発掘調査が行われるという話も耳にします。それは扨措き、こちらの可愛い盃は何とも次第が美しく整ったもので、たいへん大事にされてきたことが忍ばれます。箱の作りも洒落ており、引き蓋を開くと、小さな紫の仕覆に包まれた盃が顔をのぞかせます。私何ぞは仕覆を開き、中込が入っているだけでも、もう、ふっ〜とやられてしまう素晴らしさ。やはり次第が丁寧に整っているだけで、その物の良さが数段にも上がるものなのですね。盃の波のような模様と、箱の下の木目を波文にわざわざ見立てているところも、何とも芸が細かいのであります。今宵は中秋の名月、古染付盃で月見酒と洒落込みたいものです。
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2013 | 9_7 | Saturday
Mapplethorpe The Complete Flowers
写真家ロバート・メープルソープはご存知の方も多いかもしれませんが、ベルント・フリーベリをはじめとする、北欧のモダンデザイン陶磁器やガラスの著名コレクターでもありました。エイズで亡くなった際に、クリスティーズオークションにコレクションが出品され、その見知らぬ作品たちがニューヨーカーたちに注目されたのがきっかけとなり、モダンデザインムーブメントが起こりました。もともとメープルソープにこれらの陶芸作品を販売したのが、マーク・マクドナルドという凄腕ディーラーで、このムーブメントを作り出したのも間違いなく彼の仕業であります。ニューヨークにあったFifty/50 GalleryやGansevoort Galleryには毎日メープルソープが通い、何か一つ購入をしていったほどのめり込んでいたそうです。当時、マーク・マクドナルドは怪しさ満点の危険な香りのする人物だったようですが、今はすっかり毒気が抜け、半リタイアしてハドソン川上流で悠々自適の生活をしてるようです。話がそれてしまいましたが、メープルソープがそれらのモダンデザインの器たちに、花を生けた写真作品が方々にて有名でありましたが、写真集も数多く、なかなかどれを見てよいかわからないのが正直なところでした。それがこちらのThe Complete Flowersは、新しく再編纂されたようでして、プレムア価格もついていないまさにコンプリート頒価版。その美しい絵画のような不思議な写真、器たち、そして妖婉さも感じる花たちを堪能することができます。気になっておりましたお方は、こちらの書をぜひどうぞ。しかし、かなり大きいため場所の確保が必要です。
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