2020 | 2_17 | Monday
お預かりのお品物2020 その1
本日は、お客様よりお預かりをして店頭にて販売をさせていただいているお品物をご紹介いたします。最近は、作品帖以外でのお品物の紹介が少なくなりまして、ウエアハウスも辞めてしまいましたので、今年はブログでもご紹介をして参りたいと思っております。お品物は委託で販売しているものではありますが、実はほとんどが10年ほど前に当店で扱いました作品たちでございまして、手前味噌ながら、今見ても心惹かれる作品ばかりです。昔は良いものが出たとよく言いますが、まさに北欧陶芸作品もその通りでございまして、2014年以降、スウェーデンのとある地方都市に、凄腕の女直し師が活動を始めまして、多くの人が皆、彼女の元に殺到をして、しらっ〜と地方のオークションなどに、直し物を出してしまうという状況が今でも続いております。著名コレクターが出した品物などは別ですが、出所のはっきりしない物は、現地のディーラーもソッポを向いて、なぜか安く据え置かれております。珍しい形や美しい色味の品物を、目の前に見せられますと、つい手を出してしまいますが、安くて良い、掘り出し物などもう無いのでありまして、私も実は何度も騙されてしまいました。自分で楽しむ分なら、直しのものは良いのですが、価値の話になりますと、極めてゼロに近くなってしまいますので、涙がちょちょ切れます。そのお話はまた今度…。話は戻りますが、2014年以前のお品物は、壊れているものはそのままですし、釉の色味や形も整っており、素直で良いお品物が多いのが特徴です。そんな優品たちを今回はご紹介して参ります。第一弾は、ベルント・フリーベリの普通〜大ぶりなサイズの作品たちです。ほとんどが、フリーベリが一番技に冴えた、評価の高い50年台から60年台初頭にかけての作品たちです。簡単な解説と共にお楽しみくださいませ。
始めはベルント・フリーベリの大きな碗作品です。高台がスッと高くなったもので、立ち姿が美しい作品でも知られていますが、あまり多く出てくる形ではありません。さらに珍しい鼠の混じった緑釉で、水墨画の様な景色が美しいものです。たっぷりと大きく、見事な作品です。
BF2002_01 ベルント・フリーベリ 鼠緑釉碗 高さ8.2cm 幅14.6cm 1969年制作
(ご売約)
続いてベルント・フリーベリの辰砂釉の碗作品です。こちらも高台がスッと高くなった、立ち姿が大変に美しいもので、紙細工の様に極薄手の口縁も素晴らしいものです。外側はかなり赤く深い色味の辰砂釉が目を惹きますが、見込みはまるで星を散らした様に緑釉が点々と現れており、見込みの底には銀釉の様な景気も現れております。光沢の肌の作品は数多あり、さらに大きな作品はあまり扱いをいたしませんが、私はこれ以上の光沢のある作品に出会ったことがありません。気品のある優品です。
BF2002_02 ベルント・フリーベリ 辰砂釉碗 高さ7cm 幅11cm 1960-61年制作
(ご売約)
ベルント・フリーベリの大振りな碗作品です。定番の形をしたもので、どっしりと大きな王道の美しさを感じるものです。特筆すべきは、この釉の面白さでして、燻んだ藍色に茶の釉が掛けられておりますが、ドバッと勢いよく掛けた様な珍しい表情をしており、見込みの景色は秀逸です。また釉の肌もマット感の強い、少し膨らみと厚みを感じるものです。
BF2002_03 ベルント・フリーベリ 藍茶釉碗 高さ8.1cm 幅15.8cm 1965年制作 (280,000円)
ベルント・フリーベリの大振りな碗作品です。こちらも定番の形をしたもので、鉢サイズの大振りなものですが、口縁は紙細工の様に極薄手で、大ぶりですが、繊細さと緊張感を感じさせます。釉の表情も美しく、藍鼠の上から、茶釉を掛けたもので、薄らと青い表情が透けて見えるのが良いものです。釉の毛並みも、まるで兎の毛の様に細かなもので、口縁から高台までチリチリとした表情で流れ落ちており、フリーベリらしい美しさを大振りながらも兼ね備えた優品です。
BF2002_04 ベルント・フリーベリ 藍茶釉碗 高さ6.7cm 幅16.6cm 1963年制作 (200,000円)
ベルント・フリーベリのやや大振りなリンゴ型の花器作品です。リンゴ型の作品は多くありますが、口先が細く良く張った肩の作品が美しいとされておりますが、こちらは口先が太いタイプのもの。しかし、口縁は極めて薄く、紙細工の様な作りをしており、肩の張りや高台までの曲線の柔らかさ、滑らかさは本当に素晴らしく、口が細い作品を凌駕する程の、しっとりと艶やかな佇まいが特徴です。釉も燻んだ様な淡い黄釉をしており、静かで靄の様な景色が本当に美しいものです。この様な作品がフリーベリらしさ、まん真ん中の優品と思います。
BF2002_05 ベルント・フリーベリ 薄黄釉花器 高さ11cm 幅10cm 1956年制作 (ご売約)
ベルント・フリーベリのやや大振りな卵型の花器作品です。卵型の作品は形が何パターンか存在しておりますが、こちらは最も整ったきれいな曲線の形をしております。青磁色の釉も透明感のあるもので、嫌汚れの様な肌ではなく、しっとりと気品のある佇まいをしております。
BF2002_06 ベルント・フリーベリ 青磁釉卵花器 高さ10cm 幅7.2cm 1955年制作 (280,000円)
ベルント・フリーベリの初期プロトタイプの時代の花器作品です。可愛らしいフォルムが特徴で、50年台初頭まで作られました。まるで果実や野菜の様な曲線が面白く、64年に発刊の自身の書籍にも掲載されております。45年と古い作品は、同じ形のものでも、嫌汚れのあるものや、少しフォルムの甘いぽってりしたものも見受けられますが、こちらは何故か気品のある美しい曲線で、凛とした佇まいがあります。多くのコレクターの手を伝って来たものは、やはり何かが違う様に思います。
BF2002_07 ベルント・フリーベリ 赤茶釉花器 高さ12.6cm 幅8.1cm 1945年制作 (ご売約)
長々と失礼をいたしました。第一弾はこちらで以上でございます。お気に留めていただいた作品がございましたら、さらに詳細なお写真とご説明をお送りさせていただきますので、どうぞお申し付けくださいませ。第二弾はミニチュアなどの小ぶりな作品をご紹介予定です。
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2020 | 2_5 | Wednesday
九州 福岡・大分
いつもお世話になっておりますお客様への納品で、立春の九州へと訪問して参りました。この度も一日、福岡から大分までをたっぷりとご案内いただきまして、本当に感謝感激でございました。一期一会の多くの出会いに感謝をいたしまして、一部ではございますがご紹介をさせていただきます。
福岡から車で2時間半の、大分は臼杵のふぐの名店、良の屋へ。美味しんぼにも掲載されているお店でして、豊後水道を眼下に見下ろしていただける天然のとらふぐは本当に絶品です。この時期は一年で最もふぐが美味しい季節とのことで、まるで白身魚の刺身のような、分厚く切られたふぐ刺しは、生まれて初めて食べる豊潤で甘味のある極上品でした。また大分でしか食べることのできない、掲載NGのふぐのアレも勿論いただきまして、全身痺れて参りました。
そして大分は国東半島にある六郷満山の中心、富貴寺へ。六郷満山とは国東半島の六郷に古くから点在する寺院や行場の総称でして、その多くは仁聞菩薩が718年に開基したと伝えられています。この地域では、神、仏、鬼が複雑に絡み合う、他に類を見ない独自の文化が発展しており、山々の至る所に石仏や石塔、寺院が存在しており、半島全体が信仰の対象として全てが聖地のような神聖な地域になっております。車で走りますと荒々しい崖と山がいくつも点在しており、修験道の厳しい修行が日々行われていたことは想像に難しくありません。神仏習合の力強い石仏群がある中、平安時代に建立された国宝、富貴寺大堂は大変に雅なもので、撮影は叶いませんが、堂内の壁や柱には阿弥陀浄土図が所狭しと描かれており、本堂に安置されている阿弥陀三尊像も大変に流麗で美しい平安仏を感じさせるものでした。昔は地域の子供たちが堂内で遊んで、浄土図をチャンバラごっこで叩いていたとのことで、この国宝の中を自由に行き来する子供たちを想像すると、まるで子供たちが仏の周りで遊ぶ神の化身のような、そんな微笑ましい光景が浮かびました。
そして福岡は太宰府の参道脇にオープンしました、ALBICOCCAへ。閉店ギリギリのお時間でしたが何とか滑り込みました、ごめんなさい。ここは以前にモダニズムショーでご一緒をした、郷古さん御夫妻のお店、monica castiglioni fukuoka、VELVET THE SHOWROOM 、BATHHOUSE DAZAIFUの3店舗とギャラリースペースが、長い40メートルの建物に手前から奥へと入っております。しかし一番奥にはまだまだ続く部屋が…、さらに延びる予定のようです。真っ白で長い不思議な建物はスッと夕闇に浮かび上がり、太宰府天満宮を訪れていながら、まるで異国に迷い込んだようで、一眼で街のシンボルになっておりました。それぞれの店舗のディスプレイ、セレクトアイテム、内装は、隅々に至るまで全てにこだわり抜いており、隙がありません。一体どれだけの労力と時間を費やしたかは計り知れませんが、さらりとスマートに佇んでいる所が御夫妻らしいかと思います。百聞は一件に如かず、新しい発見が体験できてしまう驚きのお店たちでした。開店、おめでとうございます。
そして一日の最後は、福岡の赤坂にあります予約制の日本茶とお酒のバー、万です。この日は、八女の日本茶の中でも僅かしかとれない、希少な一等の玉露をいただくことが叶いました。一番煎じは35度のお湯でほんの数滴。甘く出汁のような華やかな香りが口いっぱいに広がります。飲むというよりも香りを全身が感じとるような初めての感覚に酔いしれます。一番煎じ、二番煎じと重ねるごとに味が深く、出汁のような旨味が増していきました。コースで和菓子やこの玉露を煮詰めたお浸しもいただき、今までには無い、新しい食の体験にまた一つ目上がりをさせてもらったようにも思います。この度もご馳走様でございました。楽しい九州の一日は本当にあっという間でして、お品物のお届けに上がっておきながら、日頃の疲れを癒し、吹き飛ばしてしまいました。この度も本当にありがとうございました。
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