2023 | 11_16 | Thursday
沖縄 古琉球焼
たまには北欧以外の器のお話です。今年の夏に初めて出会った沖縄の古琉球の器たち。以前から沖縄に行った際に、お土産で作家さんのやちむんの器を買ったり、人間国宝の金城さんの作品はよく知っていたのですが、当然、そこには本歌のお手本があるという視点が欠落しておりました。とあるお店でこれがひっそりと並んでおり、私は魂を抜かれた様に器たちに吸い寄せられ、「これはなんですか?」とご主人に聞いておりました。ご主人曰く古い壺屋焼とのこと。その後の記憶はほとんど飛んでおりまして、気づいたら買える限りの器を譲ってもらっておりました。素朴でありながら、心打つような器のエネルギーが、李朝の作品に惹かれた時に似ております。所謂古美術品の中では、お茶道具というよりも民藝系に近いのでしょうか。大正時代に、濱田庄司や河井寛次郎、柳宗悦がこの器に惹かれて、紹介をした事も後から全て合点がいきました。民藝から沖縄、そして北欧まで、色々な点が線でつながり、私なりの陶芸の好みが導き出された感覚です。民藝と北欧陶芸のつながりや影響は、沖縄までつながっていたのでした。
そもそも古い琉球の器は現存数の少なさもあり、普段あまり関東の骨董店でお目にかかる機会もなく、本当に偶然の出会いでもありました。琉球は古くから大陸との交易が活発な地域で、12~3世紀には陶芸技術が伝わり高麗瓦の生産を行っていたとの説や、南蛮の器は琉球のものであったとする説もある様ですが、未だ詳細はよくわかっておりません。はっきりと始まりが知られているのは、薩摩藩の支配下になった1609年以降で、薩摩から朝鮮の陶工が来て技術を伝えたというのが、起源とされております。その後、点在していた各地の古窯を統合して、壺屋焼となったそうです。こうして現在、市場に出てくる壺屋焼は小さなものが多く、戦火によって埋もれたものが少しずつ出てきたのでしょうか。ほとんどは祭器や仏具として、泡盛などを入れてお供えする祈りの道具というのも、私が惹かれるポイントです。大きなものや上手のものは将軍家や大名への献上品、交易品などに使われたとのことで、古い琉球焼きには普段使いの器というよりも、何か特別な意味を持ったものが多いように感じます。
絵付けの入った渡喜名瓶とマカイ(碗)たち。やちむんと言えば、この絵付けのものがよく知られています。絵にも意味があるようで、水平線や大地の縞模様、犬の足跡を模った丸文様などあるそうです。絵柄は明るく、仏具というよりは基本的には祭器として使ったのではと思っています。絵付けの素朴さの中に自由闊達な明るさや勢いを感じさせ、本当に心和みます。特にお碗で状態の良いものは今では全く無く、こんなカセのない肌の艶ややかな碗は特に珍しいそうです。
涙壺とも呼ばれる小さなミニチュアサイズの渡喜名瓶たち。この黒い飴釉から、恐らくは仏具として供えられたものと思います。渡喜名瓶と言えば、もっと大きなサイズで、形が首れた泡盛を入れるものが有名で、実際にはそちらの方がゾクゾクする様な強烈なオーラを纏っていましたが、お値段が高額のため初心者の私は諦めました。特に渡喜名瓶は、形が北欧のスヴェン・ヴァイスフェルトやジョン・アンダーソンのミニチュア作品にも同じ形状のものがあり、沖縄、北欧、どちらにも、小さいながらも古代より続く人間が作りだす普遍的な美しさを持った曲線や形を感じます。また首の所に線の文様が彫られているものがあり、これには結界や魔除けの意味合いを感じます。ウィルヘルム・コーゲ作品にも同様に見られる結界線で、コーゲも古代エジプトの土器などから起想したものと考えられますので、ここにも古くから続く神具に共通するものを感じるのです。
特に圧巻なのは白磁の碗と、酒盃サイズのマカイ(お碗のこと)です。お碗の方はまるで高麗堅手茶碗と見紛う作品で、がしっりとした高台の作りや釉薬の肌などは高麗茶碗ですと言われると思わず間違えてしまいそうです。盃の面取りも李朝からの影響なのか、乳白色とまでは行きませんが、その佇まいと表情に魅力が尽きません。元々朝鮮陶工を招いて陶芸技術が伝来しているため、朝鮮古陶磁の影響が相当に強いかと思いますが、これが琉球の出来であるというのがとても面白い発見でした。1600年代でも初期の頃の作品なのでしょうか、絵付けのものよりも白磁のものはかなり少なく、また状態もここまでのものは滅多にないそうです。
渡喜名瓶とマカイをInstagramに掲載をしましたら、これらの美しさに心打たれる方が多く、共感していただける方がいらっしゃって、なんとも嬉しい限りでした。店頭にもちょこちょこと置いておりますので、お気に召していただきましたら、ぜひお問い合わせくださいませ。
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2023 | 11_11 | Saturday
ギャラリー北欧器のStockを更新いたしました
ギャラリー北欧器のStockを更新いたしました。 ベルント・フリーベリの器、Berndt Friberg 06を5点ほどの作品を追加しております。秋の夜長に、ぜひごゆっくりとご高覧をいただければ幸いでございます。
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