Wilhelm Kage (ウィルヘルム・コーゲ)
黄マット釉幾何学文鉢
Yellow mat glazed bowl with geometric design
W 13cm H 7.8cm 1958年製
Gustavsberg G hand Kage Frasta ö (1958)
スウェーデンはグスタフスベリ製陶所に在籍した作家、ウィルヘルム・コーゲのマットな肌をした足付の鉢作品です。口縁にかけてやや広がった筒型の円柱の胴に、底面には五つの高足が配されております。全体にはレンガの様な赤茶の釉薬が塗られて、その上から黄色いマット釉が掛けられ、その釉薬をサンドペーパーで削り、この錆びついた複雑な表情を作り出しております。コーゲのマット釉作品は、釉薬を掛け、サンドペーパーで削る作業を何度も行っており、自分が良しとする表情が完成するまで、その作業は続けられました。胴体には長方形の窓が五つ縦に規則正しく並べられており、その列が五つ配されております。長方形の窓の中には縦方向に細かな掻き落としの線文様が入れられ、白い釉薬で色も付けられている様です。口縁の平らな部分には放射線状に細かな掻き落としの線文様が彫られ、藍の絵付けや線文様が同心円状に配されており、細部まで手抜かりは一切ありません。一つの器の完成には膨大な時間と、労力が掛けられており、絵も言わぬ存在感は、その長い製作時間から生み出されたものの様です。2014年の愛知県陶磁美術館での展覧会「モダニズムと民藝 北欧のやきもの展」では、日本民藝館にコーゲが来日時に寄贈された、同様のデザインと釉薬の作品が出展されておりましたが、まるで古代遺跡から出土したオーパーツの様な佇まいと、細工の細かさに、思わず立ち止まり絶句した思い出があります。口縁に制作時の凹みがありますが、状態はたいへんによろしいものです。